が、発見され、押し付けられる風景
「そんで?」
「それで、まだぽつぽつ拾ってきているものだから」
よろず厄散。
蜂岡千里は帳場机に頬杖をついて、話を続ける。
今日も客は来ない。
なぜだろう。昨日も客は来なかった。
偶に客が来たりする。そしてチョコレートやマシュマロを買っていく。
しかしそれだけでは商売上がったりである。
だって薬屋なのに。
ふ、と口許を押さえて欠伸を殺した。
冬を越えたあとの空気はすっかり緩み、ついでに気持ちも緩むのか生欠伸が絶えない。
「……全く余計なものを見つけてくるものだ。見てしまったものを放置ともいかないようだしねえ。それに少し、確かに気にかかる」
「おー」
篠田泰人は何が何だかよく判らないまま感心して、机の上の三枚の紙を見下ろした。
3月1日、3日2日、3月5日と、各日付ごとに一枚ずつ。
紙はいずれもノートの切れ端のようだ。よれて汚れて、ところどころインクが滲んでいる。
「えーと、そんでそっちが3月5日か。なになに、先日の事はもう気にしていないと能登君に告げる。天気は未だ回復せず、曇り」
「その日の夕食は鰻重だ」
「いいもん食ってんなあ。……」
それで?と蜂岡を見る。
それでね、と蜂岡もまた篠田を見返したところで視線が合う。
それでも何も決まっているじゃないか。