ローザ・ローテ
まず思ったのが“趣味が悪い”だった。
ハート型の風船はいかにもという感じで来る日を誇示している。
が、その安直さに頷けるのも確かだった。
彼らしいといえば彼らしいのかもしれない。
趣味が悪いのはどうやら演出だけのようで、並んだ花の質は悪くない。
いい具合にほころびかけた花弁を手で触ると、独特の天鵞絨感が伝わった。
「ローザ・ローテか…陳腐ですねぇ」
花を罵ったわけでも、演出を施した相手に言ったわけでも無かった。
言うならば、一辺倒の発想に辟易しただけだ。
それから離れてどれくらい経ったのかさえも定かでは無いのに染み付いたものが顔を出す。
それがとても忌まわしかった。
深紅の花弁から手を離すと別の物に手をかける。
カラフルな包装紙もリボンも必要は無いだろう。
良いものは良い。その自論は未だ変わらない。
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