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瓜頭
 
 
 
 

怪談ってほどじゃないんだけどさあ。俺、霊感無いから幽霊とか見たことないんだよな。
だから友達の先輩から聞いた話をします。

友達の先輩、えーと仮にAさんとします。で、そのAさんの親友をBさんとします。ややこしいから。
で、AさんとBさんはクルマが好きで給料全部クルマにつぎ込むような人でさ。
Aさんって見かけはちょっと怖いわけ。道で会ったら視線合わせたくないようなタイプ。実際高校のころは荒れてたらしいって噂。
んでも、見かけはそんなんだけど性格はけっこういいわけ。
ま、高校のころより落ち着いたんかな。クルマ走らせてりゃ満足だし、カノジョも美人だし。なっ、羨ましいよな!

でー、Y県にN峠ってのがあるのね。そこらへんマイナーなんだけどさ。
ある夜、ふと思い立ったAさんは、親友のBさんを誘ってN峠あたりにクルマ走らせに行きました。
よくあるんだってさ、そういうの。Bさんも慣れてんじゃん。何しろ思い立ったら即の人なわけね。
夜の峠を走るクルマなんてAさんの車だけなわけよ。うるせえケーサツもこんなとこまでは張らないわけよ。
もうそりゃびゅんびゅんスピード出してガンガン走りまくって、キュキューッと気持ちよく急カーブ曲がったところで助手席のBさんが「アレ?」って言ったんだって。
山肌剥き出しのところに何かが居たって。
何かが居たって、午前一時とか二時とかの話だからさ。そんな時間に何が居るってんだよ。
でもBさんは、『何が』居たかはよく判らなかった。妙に細長いことしか判らなかった。
ばっかだなあおめえそりゃ、幽霊じゃねえかガハハって大笑いした次の瞬間、Aさんは急ブレーキ踏んだ。
ハイビームで照らし出された道の真ん中に、細長い何かが居た。人間ぐらいの大きさの、でも身体が縦に妙に細長い。
クルマはすごい音立てて、轢く直前で止まったよ。

なんだありゃってBさんが言った。
一応人間の形をしてた。でも妙に縦に細長い。細長いんだ。猿みたいに中腰になってクルマを見てた。腕がぶらぶら揺れてる。
素っ裸で、つるっとしたでっかい瓜みたいな形の頭だったらしい。髪は無かった。
怪我人とかが被る、あのメロンの網みたいな帽子をかぶってんのかと思って、よく見たら違った。
頭の網に見える部分は全部青い血管で、頭の先っぽに血管が浮き出してたんだ。
頭が真っ白になって、ハンドル握る手がぶるぶる震えた。
助手席のBさんはヤバイヤバイって繰り返してる。ミラーミラー、ミラーってBさんが言うから、Aさんはサイドミラーを見た。
そうしたらさっき曲がったカーブんとこ。山肌に張り付くようにして、そっちにも細長いのが突っ立ってるのが見えた。
ハンドル思いっきり切って細長いのを避けながらアクセル踏んだ。
もう峠を抜けることしか考えらんなかったって。
Bさんはがくがくしながらヤバイヤバイくらいくらいくらいやばいやばいヤバいって繰り返すだけで、ちょっと変になってたみたいだ。
くらいくらいくらいくらいくらいやばいやばいくらいくらいくらい。
夜のせいかもしんないけど周りの木の色が暗くて、その木の間間にたまに細長いのが見えて、隣のBさんは口からヨダレ垂れてるし、クルマの外から悲鳴みたいな声も聞こえたらしい。
峠を抜けて民家が見えた時は本当にほっとしたって。
戻ってこれたって、涙が出た言ってた。
ラッキーだった。

Aさんはもう二度とN峠には行かないってさ。しばらくの間は瓜頭を何度も夢に見て飛び起きたらしい。
Bさんは最近はだいぶマシになったって聞いた。
そんでもまだ治療中らしいんだけどさ。

 
 
 
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